自然出産の縁の下を支える

 

府中の森・土屋産婦人科を夜明けに出て、誰もいない桜並木で、三分咲きのさくらをながめてから帰りました。

先日、骨盤位経腟分娩の撮影をさせていだいたときのことです。

骨盤位は、逆子のこと。頭から生まれるのがお産の基本形ですが、逆子の子はお尻や時にはそのほかの部位、例えば足などからの小さい部分から生まれてきて、頭が出にくくなってしまうことがあります。そのため、現在、骨盤位の子は多くが帝王切開です。しかし土屋産婦人科では、安全性が高いと思われるケースでは、経腟出産を選択することができます。

今回撮らせていただいたのは、頭の次に大きい部位であるお尻から生まれる、一番生まれやすい逆子だった赤ちゃんの出産です。妊婦さんの東洋美さんと私はファン助産院で出会い、助産院で撮影にご協力いただく予定だったのですが、この逆子が理由で、連携医療機関である土屋産婦人科へ転院しました。

土屋産婦人科では特に問題がなければ分娩台も使わず出産できますが、逆子の出産は、しっかりと医療処置の行える分娩室でおこなわれます。骨盤位経腟分娩は、決して単に下から産むだけではありません。状況を細かく観察しながら万が一の事態を遠ざけるための手を次々に行っていく、経験と技術を必要とする医療です。

幸い東さんのお産は、実にスムーズでした。子宮口が開くまでは一時期陣痛が遠いたりして長かったのですが、全開後、赤ちゃんが入っている袋を針で突き、クッションになっていた羊水を抜いて陣痛促進剤の投与量も増やすと、一気に陣痛が強くなりました。最後は東さんもまったく違う陣痛が来たことがはっきりとわかって、「がんばれ」と声を出して大きな波に挑みました(あとでお聞きしたところ、この「がんばれ」は赤ちゃんに声をかけていたそうです)。

やがて、赤ちゃんのお尻が出てきました。足が全部出たところで土屋先生が赤ちゃんの腰をとらえ、そこからは大変慎重に、どこにも無理がないようにすうっと引いていくと、すんなり頭が生まれました。

東さんは会陰切開もなく、まったくの無傷で元気な赤ちゃんを抱くことができました。

「今回はうまくいったでしょう。いつもそう行くとは限らない」と、ここで言うことは簡単です。そうした言葉を、私は山のように聞いてきました。そして、それは、実際そのとおりではあるのです。でも、現実にまったく無傷のお母さんをまのあたりにして、私は、複雑な気持ちになりました。

骨盤位経腟分娩は帝王切開をしないことではなく、ひとつの「技術」だということがよくわかったからです。

でも、帝王切開の安全性が高くなった今、その技術を使える産科医は減っています。それは若い医師が学ぶ場がないことを示し、まもなく、安全なタイプの逆子でも、女性は必ず開腹手術を受けなければいけなくなることを意味します。

土屋先生は、助産院のバックアップをおこなっていることでも知られています。そこにも、骨盤位経腟分娩を続けていらっしゃることに相通じる何かがあるのでしょう。

骨盤位の経腟分娩も、助産院のバックアップも「縁の下の力持ち」的な、影から、自然なお産を支える仕事だと思います。労多くして・・・というところもあるかもしれません。でも、土屋先生には、お産の医療はつつましくあるべきで、かつ介助は助産師が中心であるべきだという確固とした哲学があります。

土屋産婦人科のサイトにある「院長の図書室」の「夫・父・男は何をすべきか」を見ると土屋先生は、父親の役割について母親との違いを理解することや距離感が大切なのだと述べて、それを「ちょっとしたハードボイルドなのです」と書いています。つまり、自然出産とは、ハードボイルドの美学を理解する医師によって支えられているものだということです。

 

写真はお誕生のあと、ご家族が助産師さんと喜び合っているとき、黙して経過観察を続けている土屋先生。

 

 

※分娩経過は私の目から見たものです。

 

 

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