一本のミルク

パパが毎晩来て、ミルクを一本飲ませてくれる。
その記憶は、この子のどこに残っていくのだろう。この赤ちゃんの「見る」「聞く」「感じる」はどんな風なのだろう。そして「意識」は。まだお腹にいる時期の赤ちゃんは、私たちが忘れてしまったやり方で見たり聞いたり感じたり、覚えたりしているのかもしれない。
言葉が始まるずっとずっと前のお話。
埼玉医科大学の総合周産期母子医療センターで2018年2月から周産期医療のさまざまなシーンを撮影しています。今夏から来年にかけて医療施設、周産期関連の学会等で発表していきます。

3か月間の安静を超えて

3ヶ月間MFICUに入院され、頑張ってきた方の帝王切開出産を撮らせていだだきました。長い心配と点滴の日々を超えてのゴール。こんなありきたりな言葉しか出ませんが、すごく感激しました!!
この方は、入院中のお写真も撮らせていただこうとしたのですが状況が案じられ、撮らせていただけるチャンスがありませんでした。いつ陣痛が来てしまうかもしれない不安の連続は、どれだけ大変なことだったかと思います。
このあと、入院中からの担当助産師さんが手術台の上で授乳介助されていました。
あとでお話を聞くと、手術はとてもこわかったけれど、よく知っている助産師さんと顔見知りの看護師さんがそばにいてくれたことが「もう全然違う!」というくらいの安心感になったそうです。
今、周産期の麻酔が問題になっていますが、産科とは別に麻酔科の先生がいて活躍する手術の良さも大変よくわかりました。
@埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
病院のご協力を得て、周産期医療のさまざまなシーンを撮影しています。今夏から来年にかけて医療施設、周産期関連の学会等で発表していきます。

​出生前診断のシンポジウム@湘南鎌倉総合病院

湘南鎌倉総合病院で先週末3月31日に行なわれたシンポジウムに来てくださった皆さま、親子の未来を考える会さんが配信したライブ動画を見てくださった皆さま、どうもありがとうございました。
井上裕美先生から「英国で胎児超音波を学んでいるドクターが帰国する・・・」という話をお聞きしたのは昨年のことでした。胎児診断がより詳しくおこなえることは胎児治療や安全性にもつながりますが、中絶や妊娠中の苦悩につながる可能性があることは否定できません
井上先生とは、かつてはフリースタイル出産、出産のヒューマニゼーション研究会などたくさんのプロジェクトを「産む人が真ん中の医療がいいね」の想いでご一緒した。けれど、私が生殖医療や出生前診断の仕事で忙しくなってからは長らくご無沙汰していました。その井上先生から相談された今回のシンポジウム。そこには、タイトルに、やはり「”人間味のある”出生前診断を目指して」とありました。
カチャリ!と金具がつながった音。
ああ、やっと環がつながったと思ったものです。
出生前診断は、新型出生前診断よりはるかにたくさんの疾患がわかる胎児超音波の最新技術とと、この医療の何たるかを一般の人に伝えるたぐいまれな力を合わせ持った林先生の登場によって今後大きく変わっていくと思います。
この日「ロンドン三人組」と呼ばれていた林先生、市田先生、松永さんから詳細に伝えられた英国事情は、技術もシステムも、これまで国内ではほとんど知られてこなかった話。私はこのことは『出生前診断』でぜひ入れたくて新幹線に何度も乗り、GEにも行き、英語とも格闘して書きましたが半年くらいあがきました・・・それを、いや、それより詳しいことをこの三人にあの場で立体的に聞くことができた方たちはものすごくラッキー!です。
英国から帰国したばかりの助産師さん・松永真由美さんは、英国ではチーム制の担当助産師が出生前診断も含めて女性を支えていることを詳しく伝えてくれました。
日本では「遺伝カウンセラー」「臨床遺伝専門医」といったスペシャリストに会わないと出生前診断は受けるべきではないという体制作りが進められていますが、実は検査件数が多い海外では、遺伝カウンセラーが出生前診断を受ける人全員に会うのは不可能なこと。では誰がそこを補っているかと言うと、英国では、まずは助産師が話します。その後、必要に応じてもっと専門性の高い専門家に会っていくことになります。
日本では、一般の産科の先生への教育は開始されたと思いますが、助産師さんに対してはどうでしょうか。
日本ではまだまだ助産師さんが「自然なお産」や「産後ケア」といった限定的な小さな世界に閉じこもっていないでしょうか?
今日の胎児の検査は染色体異常も含めて超音波検査が圧倒的にたくさんの疾患を見つけているわけですし、日本も、胎児をみるのに遺伝学的検査しかなかった時代にできた枠組みを一度見直してみなければ身動きが取れなくなることは必至かと思います。
13トリソミーのあったお子さんを出産された体験をお話ししてくださった小坂あゆ子さんのことは、来られた方皆さんずっと忘れられないと思います。あゆさんは以前から存じ上げていて講演で使われたマタニティ・フォトも私が撮らせていただいたものなのですが、ご夫婦が羊水検査で診断を確定することを拒まれた理由も、初めて知りました。医療現場では、染色体疾患があるかどうかは出生後に延命治療をするかどうかの決断にかかわることがあり、ご夫婦はすべての治療をしたいと考えていたため、羊水検査は要らないと回答したのだそうです。
自然で、科学にも人間にも敬意をもった温かい会ができたと思います。日本はこのテーマについて半世紀近くも不毛な是非論を続けてきましたが、これからは、未来をもっとイメージしていきたいと思えました。ニュージーランドに行って、何も日本の事ばかり考えている必要はないと思えるようになったのかもしれません。
今度は、英国もこの目で見て来たいものです。それには、まず、年明けから膨大に抱え込んでしまった素材のアウトプットをしっかりがんばりたい!!
投稿した写真は佐野仁啓さんから一杯いただいています。​